相続人・遺産の確定
相続人

認知した子や養子も相続人と認められますので、その存在を調査するために、被相続人
(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍を取得しなければなりません。
遺産
相続財産は、預貯金や不動産だけではありません。
相続財産が漏れていたりすると、遺産分割協議をやり直さなければならなくなる場合も
ありますので注意が必要です。
通帳が見つかった口座は残高証明書を取得する
預金残高証明書を取れば、亡くなった時点での通帳残高を知ることができます。
これは各金融機関の窓口で問い合わせれば、その場で申請することができます。
この際には相続人の実印、印鑑証明書のほか、亡くなった方と請求される方の間柄がわかる戸籍謄本が必要になります。
窓口に行かれる際には必要書類を用意しておきましょう。
※残高証明書を取得するには、500円〜1000円程度の手数料が必要です。
ただし、この預金残高証明書の申請をすると、亡くなった方の口座はすぐに凍結
(出金できない状態)され、遺産分割手続が終わるまでその預金は引き出しができなくなりますので注意が必要です。
また、亡くなる直前の通帳の入出金履歴を調べたい場合には、預金の移動明細をとることも
できます。
預金残高証明書も移動明細も、申請してから発行されるまで、2週間から1ヶ月程度かかります。
他の金融機関にも口座がありそうな場合は「名寄せ」を取得する
「名寄せ」とは、各金融機関に亡くなった方名義の口座がないか調べてもらうことです。
見つかった通帳の銀行以外にも、近隣の銀行、信用金庫、信用組合、ゆうちょ銀行については、口座がないか調べてみる必要があります。
名寄せも、各金融機関に問い合わせれば申請できます。
申請に必要な書類は残高証明書取得の場合と同じです。
やはり実印や印鑑証明書、亡くなった方と請求される方の間柄がわかる戸籍謄本などが必要になります。
名寄せを取得してみて口座が見つかれば、上記と同様に預金残高証明書を取得し、
中の残高を確認します。
株券などの有価証券も忘れずに
証券会社に持っていた口座や、銀行の投資信託などに株や国債などの有価証券があった場合には、残高証明書ではなく、評価証明書と呼ばれるものの発行を申請します。
これは亡くなった時点で、どのくらいの価値があったのかを、証明してもらうためのものです。これも各金融機関に問い合わせれば、申請できます。
固定資産税課税通知書を探す
土地や建物の権利証がなく不動産が把握できない場合、市町村などから郵送される固定資産税課税通知書を見ればわかります。
これは土地や建物を所有する人に対して、役所が税金を払ってもらうために送付する通知書で、所有する不動産がその地番・家屋番号とともにすべて記載されています。
この固定資産課税通知書が見つからない場合は、市区町村役場で固定資産評価証明書を
取得します。
これは、固定資産の課税通知書の中身と同じ内容が記載された証明書です。
この書類は今後不動産の名義変更などの際にも必要となります。
注意が必要なのは、固定資産税は毎年1月1日の所有者に対して通知されますので、1月1日以後、亡くなられた日までに売却または取得した不動産については、この通知書では把握できません。
よって、下記の登記簿謄本で確認する必要があります。
土地・建物の登記簿謄本を取得する
固定資産税通知書または固定資産評価証明書に記載されている土地・建物について、法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得し、現在の所有者を確認します。
また、登記簿謄本で、土地や建物に抵当権や根抵当権などの権利が付いているかも確認できます。
契約書やカード明細、信用機関等への問い合わせで確認
各信用情報機関に、亡くなった方の個人情報開示の請求をします。
信用情報機関とは、金融機関が貸出を行う際に参考にする、個人の借入額の総合データを保有する情報機関です。銀行系信用情報機関や、クレジット会社系信用情報機関などにいくつか問い合わせをかければ、ほとんどの債務が把握できます。
通帳から銀行やクレジット会社等の引き落としがないかを確認することも大切です。
個人的な貸し借りにも注意が必要です。
契約書、借用書などがどこかにないか調べてみましょう。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、法定相続人間で遺産の分配の内容をまとめた書面のことを言い、遺産分割に参加したすべての相続人が署名・捺印します。
この協議書がないと、土地や建物の所有権移転登記や銀行口座などの名義変更などを行うことができません 。
相続の承認・放棄

相続は、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も引き継がなければなりません。
よって、プラスの財産がまったくなく、マイナスの財産だけだったとしても、相続することになります。しかし、借金だけを背負わされてしまうと、相続人の今後の生活が脅かされることにもなりかねません。
そこで、相続人の保護を図る制度として、
「相続放棄」と「限定承認」という2つの方法を認めています。
どちらを選択するかについては、プラスの財産とマイナスの財産がそれぞれどれくらいあるのかによって変わってきますので、判断がつかないなど、迷ったときは相続の専門家にご相談ください。
相続放棄とは
相続放棄とは、自己の意思によって、プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継がないことです。
したがって、借金は相続したくないが不動産だけは相続したいといったことはできません。
相続放棄は、通常は債務超過の場合に行われますが、例えば、他の相続人に財産を相続させたいときなどのように、債務超過でなくても相続人の意思によって相続放棄することができます。
相続放棄の効果
相続放棄をした場合、その放棄をした相続人は、はじめから相続人ではなかったものとみなされます。相続放棄をした相続人の子や孫に代襲相続は行われません。
同順位の相続人の相続分が増えたりします。また、仮に同順位の人が全員相続放棄をすると、次の順位の人が相続人になります。
したがって、一人が、借金が多いということで相続放棄をすると、他の相続人に借金の相続権が移ってしまうことになるので注意が必要です。
なお、相続放棄をした人が、生命保険金や死亡退職金を取得することはできますが、その場合全額が相続税の対象となります。
相続放棄の手続き
自分が相続人であると知ったときから3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きをしなければなりません。
相続放棄は、他の相続人に関係なく、相続人が一人でできます。
下記の書類が必要です。
相続放棄をする相続人の戸籍謄本
被相続人の除籍(戸籍)謄本・改製原戸籍謄本
※出生から死亡までのすべての戸籍謄本
住民票の除票
相続放棄申述書 ※家庭裁判所でもらえます
3ヶ月の期間を過きてしまった場合や、相続財産を処分してしまったりした場合には、相続放棄はできません。また、一度相続放棄をすると取り消すことはできません。
限定承認とは
限定承認とは、相続財産がプラスなのかマイナスなのかが不明な場合に、相続により得た財産の範囲内においてのみ被相続人の債務を弁済する責任を負うというものです。
例えば、親に借金があることはわかっているが、正確な金額がわからない場合や、借金があったとしても、プラスの資産もある場合で、相続放棄でない方が良いと考えられる場合などに利用されます。
相続放棄は完全に遺産を放棄する手続きですが、限定承認は条件付きで遺産を相続する手続きといえます。
限定承認の手続き
限定承認も相続放棄と同じく、自分が相続人であると知ったときから3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きをします。
注意が必要なのは、相続放棄の場合とは異なり、相続人全員(相続放棄した者を除く)で手続きしなければならないということです。
下記の書類が必要です。
相続人全員の戸籍謄本
被相続人の除籍(戸籍)謄本、改製原戸籍謄本
※出生から死亡までのすべての戸籍謄本
住民票の除票
相続財産の財産目録
限定承認申述書 ※家庭裁判所でもらえます
限定承認してから5日以内に債権者および遺贈を受けた人にはその権利を請求するよう通知し、また一般に対しては申し出るよう公告します。
そして、債権者や遺贈を受けた人に対して相続財産から弁済をすることも必要になります。
さらに、限定承認をすると、相続開始時に相続財産を時価で譲渡したものとみなされて、被相続人に譲渡所得税が課せられますので税務上の注意も必要となります。
また、被相続人が相続税の延納許可を受けていた場合に、その相続人が限定承認した場合、相続税の延納の許可を取り消されることがありますのでこれも注意が必要です

この場合は、自動的に単純承認したことになります。借金も当然に相続したことになります。
なお、相続財産の一部または全部を処分したりすると、それも単純承認したとみなされます。
マイナスの財産がある場合は、相続財産がどれくらいあるのかを正確かつ迅速に調べることが
必要となります。
各種手続き
生命保険の受取り
保険証券を確認し、保険会社へ連絡をします。
必要書類(保険会社によって異なる場合がありますのでご注意ください)
保険金の請求書
保険証券
死亡診断書(死因が記載されているもの)
亡くなった方の戸籍
保険金受取人の印鑑証明書
預貯金口座や株式等の名義変更
口座名義人が亡くなったことを金融機関が知れば、口座はすぐに凍結され、預金をおろすことができなくなります。
必要書類(金融機関によって異なる場合がありますのでご注意ください)
払い戻し請求書
名義変更する預金通帳、株券等
亡くなった方の生まれてから死ぬまでの戸籍
相続人の戸籍
遺産分割協議書
相続人の印鑑証明書
不動産の名義変更
不動産については、後日トラブルになるケースが多くありますので、早めに名義変更しておくことをお勧めします。
不動産の名義変更は司法書士の方に依頼されると簡単迅速です。
当事務所では、司法書士事務所の紹介が可能です。
遺族年金の受給
遺族年金は残されたご家族の生活を保障してくれる制度です。
大切なご家族が亡くなった場合に、亡くなった方の年金を残されたご家族が引き継ぐといった形で、その残されたご家族の生活保障として「遺族年金」が各制度から支給されます。
請求方法
請求方法 |
請求できる方 |
加入者の遺族 、年金受給者の遺族
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請求先 |
・住所地の社会保険事務所(年金受給者死亡のとき)
・勤務先の社会保険事務所
(厚生年金・共済年金加入者の死亡のとき)
・市区町村の役所(国民年金加入者の死亡のとき) |
請求する際に必要な書類 |
・国民年金/厚生年金 年金手帳
・戸籍
・死亡証明書
・印鑑 |
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相続税の手続き
相続税には、以下のように基礎控除があるため、相続財産が一定額以上でなければ、相続税の申告・納付は必要ありません
平成23年3月31日までに発生した相続については、
基礎控除額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
平成23年4月1日以降に発生した相続については、
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
※現時点で予定
相続税の申告 |
相続税の申告は、ご家族が亡くなってから10か月以内にしなければなりません。 |
相続税の納付方法 |
原則は、一括での納付になります。
一定の条件がありますが例外的に以下の2つの納付方法もあります。 |
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延納
担保提供を条件に利子3.6〜6.6%、納付期間5年〜20年の間で分割納付可能。
利子や納付期間は担保によって異なります。
→金融機関から借り入れをして一括で納付したほうが利子が低い場合もありますので検討が必要です。
物納
延納によっても、金銭で相続税を納付することが困難な場合は現物で納付が可能です。
物納できる財産は何でもよいというものではなく国が管理処分に適したものでなくては
なりません。
第1順位 国債、地方債、不動産、船舶
第2順位 社債、株式等の有価証券
第3順位 動産(自動車や高級な絵画等)